eラーニングと著作権

eラーニングと著作権
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eラーニング教材の著作権者は誰か

eラーニング教材の著作権

大学のeラーニング教材(コンテンツ)の作成方法として最も多いのが、講義風景を教室の後ろからビデオ取りし、編集を加えた映像をサーバーに蓄積し、オンデマンドで配信するという方法です。この場合の著作権について考えてみたいと思います。


・ 自著のテキスト:複製権(21条)

・ 講義者の音声:口述権(24条)

・ 学生の音声:口述権(24条)

・ 第三者著作の資料:第三者の著作権(21条(引用であれば不要))

・ ビデオ撮影:録音権及び録画権(91条)

・ 編集に関わる権利:同一性保持権(90条の3)

・ オンデマンド送信に関わる権利:送信可能化権等(92条から94条の2)


単純なケースであっても最低上記の権利の所在を明確にする必要があります。また、著作権以外に肖像権(パブリシティー権)についても配慮が必要です。 当然のことながら、教員が他大学へ移動した場合や、1度完成した教材を編集する場合のことも視野に入れた契約が必要になります。

教員と大学との契約書の作成には、専門家を入れたワーキングチームによるプロジェクト全体のスキームから個別事案に対する対応レベル規定の作成まで時間をかけて体系化したものを作成する必要があります。

コンテンツの著作権者は誰か

教育コンテンツの著作権者は誰になるのか、コンテンツ作成者本人が自分の授業等で使用するだけならば問題ありませんが、eラーニングに取り組む場合、授業と教育コンテンツは、別物の著作物になります。授業は先生の著作物であっても、コンテンツは先生だけの著作物とは限らないのです。完成したコンテンツは、先生の著作物か、職務著作(法人著作)か、編集等の加工を受けるため共同著作となるのか、大変悩ましいところです。ただ言えることは、著作権は、譲渡可能な権利ですので、紋切り型に捉えるよりコンテンツの特性や利用方法で、その権利の所在を決めた方が無理が無いように思われます。仮に全ての権利を大学に移管した場合、先生方のインセンティブやモチベーションの低下も考えられます。将来的に教育コンテンツの大学間での相互利用や社会人向けの販売等も考えられますので様々なケースを勘案した権利配分を考えなければなりません。


NIME(独立行政法人 メディア教育開発センター:現在その業務の一部は放送大学に引き継がれています)が、ICT活用教育を導入している教育機関を対象として、ICT教育の取り組み組織と教育用コンテンツの作成主体に関する2007年度と2008年度の調査報告があります。

比較しやすいように表にまとめてみました。

ICT教育の取り組み組織 2007 2008
学内の一部の組織(情報教育センター、学部・学科等)で取り組んでいる 52.6% 52.2%
組織的な対応ではなく教職員が個人的に取り組んでいる 39.0% 40.9%
全学的な委員会やワーキンググループを設置して取り組んでいる 30.4% 30.6%
国内の大学等とのコンソーシアムで取り組んでいる 9.0% 8.4%
海外の大学等とのコンソーシアムで取り組んでいる 1.9% 1.5%
その他 2.0% 2.2%
教育用コンテンツの作成主体 2007 2008
組織的な対応ではなく個人的に対応 80.5% 75.0%
大学の組織(センター・学科・委員会(WG)等) 40.4% 35.2%
既製のコンテンツの利用 20.7% 21.1%
外部へ委託 11.2% 10.0%
大学等コンソーシアム 2.8% 2.9%
その他 3.9% 3.0%

関連する著作権法

第十五条(職務上作成する著作物の著作者) 詳細
第十九条(氏名表示権) 詳細
第二十条(同一性保持権) 詳細
第二十一条(複製権) 詳細
第二十三条(公衆送信権等) 詳細
第二十四条(口述権) 詳細
第二十七条(翻訳権、翻案権等) 詳細
第九十条の二(氏名表示権) 詳細
第九十条の三(同一性保持権) 詳細
第九十一条(録音権及び録画権) 詳細
第九十二条(放送権及び有線放送権) 詳細
第九十二条の二(送信可能化権) 詳細
第九十三条(放送のための固定) 詳細
第九十四条(放送のための固定物等による放送) 詳細
第九十四条の二(放送される実演の有線放送) 詳細

参考文献

■著作権法逐条講義 加戸守行著 社団法人著作権情報センター刊
■著作権法詳説 三山裕三著 雄松堂出版刊
■詳解著作権法 作花文雄著 ぎょうせい刊
■アメリカ著作権法の基礎知識 山本隆司著 大田出版刊
■文化庁ホームページ
■社団法人著作権情報センターホームページ
■独立行政法人 メディア教育開発センター
 eラーニング等のICT を活用した教育に関する調査報告書 (2007年度・2008年度)


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