権利者不明の場合の利用の円滑化
過去に放送されたテレビ番組等をインターネットで二次利用する場合、著作権者や実演家(俳優)が所在不明であるなどの理由で許諾が得られないことが阻害要因であり、まずこの点を解決すべきとの指摘。
法改正によって・・・・
- 実演家の所在不明の場合にも、裁定制度を利用できるようにする。
- 裁定申請の際に供託金を供託すれば、裁定結果が出る前でも暫定的な利用を認める。
- 著作隣接権者不明等の場合の裁定制度の創設
著作権者について設けられている第67条の裁定制度と同様の制度を,著作隣接権者の不明等の場合についても創設する。(第103条関係)
- 裁定申請中の利用を認める新制度の創設
権利者捜索の相当の努力をした上で,権利者不明等の場合における裁定の申請を行い,かつ,あらかじめ文化庁長官の定める額の担保金を供託した場合には,裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間(それまでに権利者と連絡することができた場合は,それまでの間),著作物等を利用することができる。(第67条の2及び第103条関係)
著作隣接権者不明等の場合の裁定制度
1.告示委任事項
今般の法改正により、文化庁長官の裁定を受ける前であっても、長官の定める使用料相当額の担保金を事前に供託した上で著作物を利用することができる「申請中利用制度」を創設したこと等に伴い、「相当な努力を払っても著作権者と連絡することができない場合」の内容等について政令で定めることとされた。
これを受け、著作権法施行令の一部を改正する政令案(以下「政令案」)では、以下の方法のすべてにより権利者と連絡するために必要な情報(氏名、住所等。以下「権利者情報」)を得ようとしたにもかかわらず得られなかった場合又は当該方法により得られた情報その他その保有するすべての情報に基づき権利者と連絡をしようとしたにもかかわらず連絡ができなかった場合を規定。
- 広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料を閲覧すること
- 著作権等管理事業者その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者へ照会すること
- 日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法により、公衆に対して広く権利者の情報提供を求めること。
著作隣接権者不明等の場合の裁定要件を規定する内容
2.告示で規定する内容
- 広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料(ア関係)
文化庁長官が定める刊行物その他の資料は、次に掲げるもののすべてとする。
- 著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の種類に応じて作成された名簿その他これに準ずるもの(例:美術年鑑、レコード年鑑、著作権台帳等)
- 広くウェブサイトの情報を検索する機能を有するウェブサイト
- 著作権等管理事業者その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者(イ関係)
文化庁長官が定める者は、次に掲げるもののすべてとする。
- 著作権等管理事業者その他の著作権等の管理を業として行う者であって、裁定を受けて利用しようとする著作物等と同じ種類の著作物等(以下「同種著作物等」という。)を取り扱うもの
- 同種著作物等を業として公衆に提供し、又は提示する者(例:出版社、レコード会社等)
- 同種著作物等について識見を有する者を主たる構成員とする法人その他の団体(例:学会、著作者団体等)
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法(ウ関係)
文化庁長官が定める方法は、社団法人著作権情報センターのウェブサイトに30日以上の期間継続して掲載することとする。
権利者不明調査の基準
- ア関係)独力での調査
各種年鑑、著作権台帳等
ウェブサイトで検索
- イ関係)関連団体等への調査協力依頼
著作権等管理事業者
学会、著作者団体等
出版社、レコード会社等
- ウ関係)インターネットによる告知
社団法人著作権情報センター
ウェブサイト
30日以上の期間継続して掲載
裁定のためのポイント その1
対象となる著作物
- 著作権者の了解を得て既に「公表」されている著作物
著作権者の了解を得て公衆向けに「出版」、「上演」、「演奏」、「上映」、「放送・有線放送」、「インターネット等での送信」、「口述」、「展示」、「貸与」などが既に行われているもの
- 著作権者の了解を得ているかどうか不明であるが、相当の期間にわたって世間に流布されている著作物
相当の期間にわたり「出版」、「上演」、「演奏」、「上映」、「放送・有線放送」、「インターネット等での送信」、「口述」、「展示」、「貸与」などが行われているもの
裁定のためのポイント その2
- 文化庁への相談
裁定の申請の条件として「相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができないこと」が必要である。調査不足で受理されないこともあるので文化庁と相談の上すすめることが肝要。
- 申請書の提出
定型書式は無いが、文化庁ホ−ムページに記載例がある。この記載例を参考に作成するとよい。(申請書に申請にかかる手数料(13,000円)を添付し納付する)
- 補償金の額の決定
補償金額の算定は、印刷物なら部数・売価、全体に対する分量、業界の標準料金、著作権等管理事業者の使用料規定等から算出し、資料としてそれらの複写を添付する。
- 裁定の可否の決定
申請が受理されれば2〜3週間で裁定される。(予定)
裁定著作物の権利者と連絡がとれた場合
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対応 |
補償金の支払 その他 |
裁定申請中に連絡が取れた場合 |
当事者間で裁定申請期間の補償金額を協議する。
その後の利用は、裁定とは関係なく通常の使用として権利者に利用申請。 |
担保金から補償金を支払う
不足分があれば申請者が追加して支払う |
裁定決定後に連絡が取れた場合 |
当事者間で補償金額を協議する。 |
担保金から補償金を支払う
不足分があれば申請者が追加して支払う |
裁定申請中に使用していて、「裁定しない決定後」に連絡が取れた場合 |
当事者間で裁定申請期間の補償金額を協議する。 |
担保金から補償金を支払う
不足分があれば申請者が支払う |
裁定著作物の再利用 |
新たに裁定の申請 |
担保金を預託 |
裁定制度利用の流れ